ただ見ることも何かの役目なのではないかと思う時がある。
ただ見る、何をする訳でもないし、何かを言う訳でもない。
ただ見ている。
その姿を見続けている。
それで何になるとか、何かの役に立つとか、そういうこともない。
それを誰かに伝えられるとか、そういうこともぼくは思っていない。
だけれど、事象がそこにある。
だから、ぼくはそれを見ている。
ただ見ている。
じっと見ている。
それは山を見るともなく見ている、その感じに似ている。
「祖父と私」より
![Oratnir・別府倫太郎による祖父を撮ったモノクロフィルム写真作品。稲刈りの合間に畦道で休憩しているところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/toutyan-18-1-1024x662.jpg)
![Oratnir・別府倫太郎による祖父を撮ったモノクロフィルム写真作品。田植えの前にトラクターで代掻きをしているところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/toutyan-4-1-697x1024.jpg)
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による雪国の雪の風景を撮ったモノクロフィルム写真作品。雪の積もった道路の真ん中に祖父が立っているところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/img302-1-1-1024x696.jpg)
Film ILFORD HP5 PLUS 400
Camera Nikon New FM2
写真とことば
かえるの鳴き声が夜の深さをはかりうる一つの指標ならば、今この季節が持つ美しさはどこにあるのだろう。水の張った田んぼに映る外灯の灯りが美しいと感じるのは、どこか隔世じみたおもむきがあるからなのかもしれない。二つのものがそこに相反しているだけで、まるでそれが無限に続いていくような気さえするのだ。記憶が鏡の中で向かい合わせになれば、記憶はどこまでも増殖するだろう。この季節の田んぼを見るたびにかなしいような、心の底に一滴の水滴が垂れるような冷たさを感じる。孤独はどこまでも追いかけてきて、生きていくことが存在する限り、景色は記憶を連れてくる。
風の通る先に向こうがある。
向こうに祖父がいる。祖父が向こうにいる。
その間に風が通る。
孤独は水面に反射する。反射する孤独の奥に言葉がある。
僕は書きたいのだ。書きたいと思うのだ。
それは単なる記憶でもなく、単なる回想でもなかった。
それは単なる悲しみでも、単なる感傷でもなかった。
向こうに祖父がいる。祖父が向こうにいる。
そのことを僕は書きたいのだ。
「祖父と私」より
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による祖父を撮ったモノクロフィルム写真作品。田植えの風景、祖父が苗を手植えしているところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/05/toutyan-Tshirt1-1-678x1024.jpg)
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による田植えの風景を撮ったモノクロフィルム写真作品。苗を植えたばかりの田んぼの水面に林が反射しているところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/toutyan-6-1-1024x675.jpg)
雪
ぼくは雪国に住んでいながら
どこか異邦人のような気持ちで
雪を見つめることがある
降りしきる雪にかこまれていると
雪がとても特別で新鮮なものとして
頭の中にその情景が飛び込んでくる
どこか知らない遠くの国へ行って
まわりは誰も知らない人たちがいて
まわりの人が何をしゃべっているのか
その言語も何ひとつ分かりはしない
そんな清々しいまでの
孤独のようなものを
雪の中にいると感じることがある
少しひりつくような
どこまでも自由で
どこまでもひとりで
どこまでも生きているという感触がする
写真集「雪」より
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による雪国の雪の風景を撮ったモノクロフィルム写真作品。雪の降っている中での2本並んだ木を撮ったところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/kimihiraki2-1-1-659x1024.jpg)
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による雪国の雪の風景を撮ったモノクロフィルム写真作品。雪の降っている中での木を撮ったところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/kimihiraki-1-1-660x1024.jpg)
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による雪国の雪の風景を撮ったモノクロフィルム写真作品。雪の降っている中での杉の木を撮ったところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/img028-1-695x1024.jpg)
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による雪国の雪の風景を撮ったモノクロフィルム写真作品。豪雪で、猛吹雪の中での風景を撮ったところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/img026-1-1024x673.jpg)
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎による雪国の雪の風景を撮ったモノクロフィルム写真作品。雪の降っている中で祖父が昔ながらのすげ傘を被りながらスノーダンプで雪かき(雪ほり)をしているところ。撮影場所:新潟県十日町市 使用カメラ:[Nikon New FM2]、フィルム:[ ILFORD HP5 PLUS 400]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/05/img042-1-730x1024.jpg)
![Oratnir(オラトニール)・別府倫太郎のモノクロフィルム写真作品で撮ったプロフィール写真。使用カメラ:[Mamiya m645 1000s ]、フィルム:[ ILFORD HP5 ]](https://oratnir.jp/wp-content/uploads/2026/07/img006-1-1024x789.jpg)
写真 / 文章
別府倫太郎 プロフィール
2002年12月5日生まれ
作家・アーティスト
2012年頃よりNikon New FM2でフィルムカメラを始める
2017年、文藝春秋より初の著書『別府倫太郎』を刊行
『ユリイカ』(青土社)、『文春オンライン』などにも寄稿
2026年5月、クリエイティブブランドOratnir(オラトニール)を始動
お問い合わせ先・お仕事のご依頼など
e-mail : office@oratnir.jp
主な使用機材
カメラ Nikon New FM2 ・ Mamiya m645 1000s
フィルム ILFORD HP5 PLUS ISO400 ・ Kodak Tri-x 400 ・ Kodak ColorPlus 200

photograph T-shirt
一枚の写真を、Tシャツにする。
見るものだったそれを、着るものに変える。
写真は額の中を出て、あなたと共に歩き出す。
増え続ける景色を、着分けていく。
オラニール フォトグラフTシャツシリーズ。
写真集 父ちゃん
A4判 60ページ
ぼくは祖父のことを「父ちゃん」と呼ぶ。
それはみんなが「父ちゃん」と呼んでいるから、
ぼくも父ちゃんを「父ちゃん」と呼ぶ。
カメラを手にした時から、ずっと撮り続けてきた被写体。
それは祖父=父ちゃん。
フィルムカメラNikon FM2で撮ったモノクロ写真。
一枚一枚に文章を添えた写真集。
写真集 雪
A4判 43ページ
同じものを見ていても
雪の見え方が異なるのだ
カメラから雪を覗いている時
その二つの見え方を
行ったり来たりしている
日常にある雪についての文章と写真。
フィルムカメラで撮ったモノクロ写真集。



















