自分を見直したとき、
生まれる言葉とはどんなものだろうか。
変えようとしても変えられない、
一つの反応としての言葉。
その言葉がぼくの中にはあるのだ。
そんな、ぼくはその存在を照らし合わすように、
示すように生きている。
光りだされるような小さな小さな熾火を
たよりに生きている。
これ以上、大きくもならならいし
小さくもならないような、
けれど示すような何かを見つめようとしている。
ぼくは知っているのだ。
その存在を。
きっと、もう一度自分を見直したとき、
内から生まれるものに気づくと信じて。
その「言葉」を一瞬のうちに見られると信じて。
2016年 文藝雪月花 創刊号 「雪」より


こんにちは。別府倫太郎です。
この本の著者です。
この本の文章は私が書いてきたものです。
本の題名も私がつけました。
その題名も『別府倫太郎』です。
偉大でもない私が自分の名前で、自分の文章で本を出すのですから、
こうして自分で言わなければ実感がわかないのです。
それでも私が本を出すのは、私が書き手だからです。
いつからそうなのか、書くことが好きだからなのか、そういうことは自分ではわかりません。
でも気が付けば、私は生まれた時から書き手であったような気がするのです。
雪の降るここ新潟県十日町市で。
2017年「別府倫太郎(文藝春秋)」はじめに より
「別府倫太郎」 文藝春秋刊 2017年出版

新潟県在住の別府倫太郎君は十四歳。
五歳のときに円形脱毛症により全身の毛が抜けてしまった。
さらに七歳で小児ネフローゼを発症。ステロイド治療のためムーンフェイスとなる。
小学校2年生のとき、学校に行かないことを選択した。
その後、インターネット新聞『別府新聞』を開設。
別府新聞社の社長として、地域の話題の取材にでかけたり、
自分のことや周囲のことをエッセイとして発表するようになった。
次第にその瑞々しい文章の魅力が評判を呼び、知られるようになった。
本書は『別府新聞』で発表した文章と、
『別府新聞』を休止して以後に発行する個人雑誌『文藝雪月花』などに掲載した
エッセイ、日記、小説、詩のほか、別府君の文章が大好きだという吉本ばなな氏との対談も収録。

外には水が流れていた
雪が消えたところから発せられる
静かな展望をぼくは見守っていた
どんな川だろうと
そこに水が流れていることはぼくにとって何かをのこす
心地よいとも違う
そのかすかな抵抗を
ぼく自身の中に感じる
一つのものが流れていくことは
そこに一つの抵抗が生まれるということだ
書くということでも
考えるということでも
それは逆行しているようで
ながれに沿っているのだ
そこに本質をつかんだ時
そこにはふっとした怖さが生まれる
その考えが再び呼び起こされたような
そのところに
そこを見直させる力がある
すべてが堂々とできないような
そんな隠しようのない隠しごとを
表すというのが
書くということだ
変なことをぼくは言っているようだが
そこの小さな川を見て
そう思う
雪が消えた今、
その雪の名残がそこの水に見られる。
2016年 文藝雪月花 創刊号 「雪」より
「文藝雪月花」


別府倫太郎が13歳のときに創刊した文藝誌
2016年の創刊号から2024年までに全8号を発刊している

繰り返し、山びこのように、繰り返し聞こえる。
ぼくは言い返さない。
言い返せば、ぼくに返ってくる。
無視すれば、もっとやってくる。
だから、黙って、みんなの方を向いて歩く。
顔を止めて歩く。
黙って、顔を止めて歩く。
顔を止めるってシンプルなことだ。
スイッチをひとつ、切ればいい。
黙るって、無視ともまた違う。
黙るって、黙りたくない時に黙るっていうことだ。
顔を止めて黙る。
これがぼくのやり方。
2023年 文藝レゾンデートル 小説「小学生」より
文藝レゾンデートル

自分であることは、文藝。
文章、絵、写真、存在理由。
ぼくにとっては全て同等のことであり、存在理由(=レゾンデートル)である。
別府倫太郎の書く言葉、描く絵、撮る写真。 見て感じる文藝誌。

別府倫太郎 Beppu Rintaro
作家・アーティスト
2002年12月5日生まれ、新潟県十日町市在住。
2013年より創作を始め、アール・ブリュットの視点から独自の表現を追求する。
幼少期から他者に見られている感覚を見つめてきた。
見ること/見られること、生きること/痛みを受け取ることを問い続けている。
絵画、写真、言葉——雪の降る土地で、それぞれの表現が並走する。
2017年、文藝春秋より初の著書『別府倫太郎』を刊行。
『ユリイカ』(青土社)、『文春オンライン』などにも寄稿。
2025年10月、東京・紀尾井町の文春ギャラリーで
初個展 pour soi ― プール・ソワ ― を開催。
2026年5月、クリエイティブブランドOratnir(オラトニール)を始動。
お問い合わせ先・お仕事のご依頼など
e-mail : office@oratnir.jp
